研究概要

 

ファミリーによって所有・経営されている企業は、世界の企業数の約70%を占め、また主要産業国におけるファミリービジネスのGNPに対する貢献度は40~60%と言われている。米国では、新たな雇用創出の78%がファミリービジネスによるものであると共に、59%の雇用、49%の国内生産を生み出しているとの報告もある。 


日本においても、創業者一族が経営に関わるファミリービジネスが国内企業総数のうち9割以上を占め、各地域経済においてその中核的役割を担っている。日本における業暦100年以上のファミリービジネス企業数は数万社を数え、欧州(6,000社)、米国(800社)を大きく上回っており、その意味で日本はグローバルにみても「ファミリービジネス大国」と位置づけられる。 


一方、ファミリービジネスには、非効率、閉鎖的、小規模、ガバナンスが甘い、といったマイナスの印象がつきまとうことがある。また、これまでは、同族企業に零細・中小企業が多いということもあり、研究調査は企業規模をベースにした中小企業論として取り上げられるか、企業の永続性をベースにした老舗の研究として取り上げられることが多かった。 


しかし、規模や永続性をベースにした企業研究ではなく、ファミリービジネス企業における長期的な視点に立った投資行動や後継経営者による新規事業分野の開拓(いわゆる第二創業)が、日本経済の成長力、イノベーション力を高める上で果たしている役割について研究をすべきタイミングが来ている。 


こうしたファミリー企業経営研究をより高次元で推し進めるためには、歴史学、家族心理学、経営学、文化人類学など多様な学問分野との積極的な連携やネットワーキングをはかり、研究の相互交流とそれぞれの発展をはかることが必要とされる。さらには研究者に限らず、学術的な研究に関心の高いファミリー企業経営者、コンサルタントなどにも参加を求めて、一体的にファミリー企業経営に資する理論や実践の手法を会得することも求められる。この分野では欧米を中心とした海外での研究が進んでいる。しかし有力なファミリー企業の多くが日本にあることから、ファミリービジネスにかかわる研究者や経営を実践している実務家との研究と交流の場および早稲田大学からのメッセージ発信の場を作る必要がある。そこで、ファミリービジネス研究所では、早稲田大学が総合大学である強みを活かし、いくつかの代表的なファミリービジネスを研究対象として学際的研究を行い、社会への総合的な研究成果発信を目的とする新たな研究所の設立を提唱するものである。